ものがたり・みどころ

舞台は1975年、神戸の沖縄料理店「てだのふあ おきなわ亭」。そこに集まる沖縄出身の人々の悲しみを、料理店を営む夫婦の小学六年生の娘、“ふうちゃん”こと大峯芙由子の目を通し描いていく。「てだのふあ」とは沖縄の言葉で「太陽の子」の意味。

芙由子が六年生になった頃、父が心の病気になった。芙由子の両親は太平洋戦争を沖縄で経験し、1972年に沖縄が日本に返還される前に、母の親戚の“おじやん”を頼り、神戸に移り住んでいた。神戸で暮らし始めてすぐ、芙由子が生まれたので、芙由子は沖縄のことはあまり知らなかったが、父親の病気はどうやら沖縄と戦争に原因があるらしいと思っていた。芙由子は、なぜお父さんの心の中にだけ戦争は続くのだろう?と父の病を気に掛けながらも、一生懸命に店を手伝っていた。

おきなわ亭は連日、常連客で賑わっていた。戦争で片腕を失った“ロクさん”、芙由子に沖縄のことを教えてくれる“ギッチョンチョン”、神戸生まれの“ギンちゃん”、お父さんの沖縄からの友達の“ゴロちゃん”、そして祖父の様に芙由子が慕うおじやん。そんなある日、ギッチョンチョンが“キヨシ”という沖縄出身の少年をおきなわ亭に連れてくる。キヨシは沖縄を出て大阪の身元引受人の元で暮らしていたが、どうやら悪い連中とつるんでいて、補導歴もあるらしい。どこか影があり、沖縄出身のキヨシのことが、芙由子は気になって仕方がなかった。そして同時に父やキヨシの心の向こう側に見え隠れする、芙由子がまだ一度も訪れたことのない“沖縄”という存在にも、芙由子の気持ちは動かされていくのだった。おきなわ亭に集う人々との交流を通じて芙由子は成長し、そして戦争が沖縄の人々に与えた悲しい過去に気づいていく……。


神戸で学校教員を務める傍ら小説を書き始めた児童文学作家・灰谷健次郎が1978年に出版した「太陽の子」。一貫して子どもは性善説であることを説き、“人間の本当の優しさとは何か”を問い続けてきた作家、灰谷健次郎。その灰谷健次郎の世界観をラサール石井脚本、鵜山仁演出でイッツフォーリーズが2019年にミュージカル化いたしました。音楽はイッツフォーリーズ作品ではお馴染みの吉田さとるの書き下ろし楽曲のほか、永六輔作詞、いずみたく作曲の「にほんのうた」シリーズより沖縄県の歌「ここはどこだ」を挿入歌に使用。芙由子が父やキヨシの心の中に見た、日本であって日本でない場所、沖縄とはいったい何なのかを問いかけます。また芙由子の母役には沖縄出身のシンガー、普天間かおりを起用。小学6年生の芙由子役は、初演から続投の星茜音と、今回オーディションで選ばれた大村響叶が務めます。

沖縄復帰から50年、日本のオリジナルミュージカルを創り続けるイッツフォーリーズが、貧しくも懸命に生きる市井の人々の姿を描く心温まるミュージカルです。