音楽劇 獅子吼

死を待つばかりの老獅子の前に現れたのは兵士となった、かつての飼育員だった

決して瞋(いか)るな。瞋れば命を失う……浅田次郎原作、獅子と人間の哀切と尊厳を和田憲明が音楽劇として描く。
戦争の足音が日増しに強くなる頃、東北地方のとある港町。そこにはかつて町の子どもたちを笑顔にしていた小さな動物園があった。「決して瞋(いか)るな。瞋れば命を失う」 という父の訓えを守り、動物園で運命を受け入れて、静かに暮らす老獅子。かつての百獣の王は檻の中で妻をめとり子をもうけ、決して人間に瞋りを見せることなく安らかに生きていた。やがて、人々が動物に癒やされていた時代は過ぎ、近づく戦火に家族や自分の命さえ危うくなって来ていた。動物園も例外ではなかった。戦況は悪化の一途をたどり、市井の人々の食料は底をつき、動物たちに分け与える餌の余裕などある訳もなかった。そんな中、少ない食料を工面しながら動物の面倒をみていた飼育員の草野も召集されてしまう。子を奪われ、妻も亡くし、死を待つばかりの獅子の前に現れたのは、兵隊となり銃を抱えた草野だった。戦争下の過酷な状況に苦しむ人間たちを前に、獅子が父の訓えを破るとき……。「天切り松 人情闇がたり」「月のしずく」に続き、浅田次郎作品を音楽劇として上演。獅子と人間の、哀切と尊厳が胸に迫る作品。

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